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No.044「御田小学校の図 大きい御田小学校絵地図を描く」ご報告


2月15日(金)に港区立御田小学校にて4年生58名の生徒が参加し、「御田小学校の図 大きい御田小学校絵地図を描く」という授業を行いました。

講師は美術家の平町 公(いさお)さん(1986年大学院絵画専攻修了)です。
今回の授業では、児童4〜5人が1グループとなり、
小学校周辺のお寺や教会を取材して集めたスケッチを元に、学校を取り巻く風景やそこに暮らす人々の顔を、高さ1m、長さ40mのキャンバスに共同で描きました。
その様子をご報告します!

出前アート大学No.044「御田小学校の図 大きい御田小学校絵地図を描く」

講師:平町 公 氏(1986年大学院絵画専攻修了)
日時:2月15日(金)8:45〜15:10
場所:港区立御田小学校 体育館
対象:4年生58名(男子29名、女子29名)

(1時間目)講師作品紹介・絵地図の描き方の説明




まずはスタッフ紹介です。
平町先生が教鞭をとられている橘学苑高等学校の卒業生で、現在は多摩美術大学に在学中の学生さんや、勉強のためにと兵庫県からいらしてくださった卒業生の方まで、意欲あふれるスタッフが集まりました。


続いて平町先生が自己紹介をしました。
2006年に描かれた作品「京浜工業地帯の掟・三部作 羽田沖の図」を前に、大きな絵を描き始めたきっかけや、絵を描き続けることへの思いを語ります。「好きなことを続けたいと思ったら、諦めない。」説得力のある言葉です。



授業で紹介した「京浜工業地帯の掟・三部作 羽田沖の図」は、縦2m、横10mキャンバスを上下に2枚並べていますが、これは作品の一部で、実際にこの6倍体育館の床一面を覆い尽くすほどの大きさがあります。部分とはいえ作品の大きさと、実物ならではのダイナミックな絵に児童も驚いた様子で見入ります。

そして、授業のお話です。
事前に取材したスケッチを元に、平町先生がいつも描いている方法で、学校を取り巻く風景やそこに暮らす人々の顔を大きなキャンバスに描き、御田小学校の絵地図をつくります。「1人ではなく、グループで力を合わせて製作してください。」と平町先生。

今回は、体育館の壁とほぼ同じ長さの20mのキャンバスを2本、12グループが分担して描きます。1グループが描く長さは約2m80cmです。ルールは、自分たちの道と隣のグループの道をつなぐこと。隣同士の道をつなぐと、御田小学校のまわりを一周するような長い道が出来上がります。



次に描き方の説明です。
2月2日(土)に取材し、8日(金)の図工の授業で原寸大の模造紙に描いた下絵を、キャンパスに木炭で写します。立ったままで描けるように、木炭は長い棒につけて使います。描画用の木炭は柔らかく、強く描くと濃く太い線に、弱く描くと柔らかくて細い線にと、力の入れ加減によってさまざまな線を描くことができます。



木炭の後は、黒い絵の具で輪郭を描きます。習字用の筆を使うため、太い線も細い線も自由自在。たっぷりと絵の具をしみこませれば長い線を描くこともできます。
木炭の線をそのままなぞるのではなく、新たな線を描く気持ちで描くとよいそうです。




早速、製作開始です!初めてとは思えないほど、棒についた木炭を使いこなしている児童たち。腕をのばし、身体全体を使って描くのは気持ちがよさそうです。大きな画面にのびのびと、ダイナミックな線が描かれていきます。




棒の先を持てば、細部も描き込めます。12のお寺と1つの教会に囲まれた御田小学校。建物の他にも、五輪塔やお地蔵様など地域ならではの風景が描かれています。取材でお世話になったご住職様が登場しているグループもありました。

(2時間目)絵地図を描く 〜線で描く〜





次は黒い絵の具で輪郭を描きます。モチーフやエリアごとに担当を決めて手分けするグループもあれば、端から一斉に描いていくグループもあり、進め方もさまざまです。友達とアイデアを交換したり、平町先生と相談しながら製作を進めます。

(3・4時間目)絵地図を描く 〜色を塗る〜






まずは平町先生の実演です。刷毛を使い、道を黄色で塗ります。そして、空以外の場所を黄土色で、木や木造建造物を焦げ茶色で塗っていきます。アクリル系の絵の具を使っているため、少し薄めに溶いた絵の具を黒い線に重ねると下の線が透けて見え、色が重なって絵に深みがでてきます。絵の具が乾いていなくても、色をのせていくと、色が混ざりながらさまざまな表情を生みだします。色が入ることで変わっていく絵の印象を、児童たちは真剣な表情で見守ります。






細い筆を刷毛に持ち替えて、いざ実践。黄色が増えるにつれ、1本の長い道が浮かび上がります。



木造建造物や木を焦げ茶色で塗ったら、コンクリートや空、植物や朱塗りの門などに少しずつ他の色を加えていきます。






中には指先を使って、隙間に色を塗る児童も。道具を駆使してイメージを形にしていきます。


ペースをあげて描いていく児童たち。4時間目にして既に白い所がないほど絵の具が塗られ、スタッフの描画時間が足りないんじゃないか?という心配は、取り越し苦労に終わりました。

(5時間目)絵地図を描く 〜仕上げ〜




再び黒い絵の具の登場です。アクセントになるように輪郭を描いたり、文字を書いて全体を仕上げます。黒が入るにつれ、絵が強く引き締まった印象に変わります。



授業の途中で児童が取材した魚籃寺(ぎょらんじ)のご住職様が見学に来てくださいました。平町先生とお話するご住職様。児童の絵にも描かれています。授業をきっかけに小学校と地域の人がつながっていくのはステキなことですね!

(6時間目)発表会



ループごとに自分たちが描いた絵の前に立ち、平町先生からインタビューを受けました。
「頑張った所はどこかな?」
「建物を描いていて、小さい所に文字を描くのが大変だったけど、班の人が手伝ってくれて描けました。」
「鐘の形です
「取材の時、何分間も何分間も鐘の所に立って、頑張ってスケッチしていたのを見ていたよ。そういうのが絵にでているよね。」


最後に平町先生からお話がありました。
「仲間と一緒に相談しながら描けましたか?一生懸命やった人は、自分で頑張ったと言えると思います。私は作品をつくる時に、ひとつ一つをやりきったという気持ちで続けています。その積み重ねがとても大事だと思うので、皆も、人の中で生きていること、やりきる気持ちを大事にしながら、自分の好きなことをずっと続けられるような人になってほしいと思います。」




お話の後、道に沿って一周、全員で歩いてみました。御田小学校を取り囲む風景や人々が次々と現れます。取材から授業まで、多くの人と出会い、関わり、一緒につくりあげた御田小学校の絵地図。人とつながることの豊かさ、モノを創りだす喜び、友達と協力して一つのことをやり遂げる楽しさを授業を通して感じてもらえたら、これ以上嬉しいことはありません。

完成した「御田小学校の図」


 荘厳寺
常教寺
正覚院
玉鳳寺、幽霊坂
清久寺
大信寺
宝徳寺
徳玄寺、魚籃坂
魚籃寺、長谷川弓具店
薬王寺
正山寺、キリスト友会 東京月会

作品は授業後に体育館に展示しました。
児童の皆さん、保護者の皆様、児童の取材活動にご協力くださいました関係者の皆様、ぜひ一度足をお運びください。




授業の実施にあたり、港区立御田小学校 高橋康夫校長先生、馬場千鶴子副校長先生、図工専科の辻 美知子先生、4年1組の牧野すみれ先生、4年2組の三田綾乃先生をはじめとする先生方に、多大なご理解とご協力をいただきました。
児童の取材活動におきましては、玉鳳寺、魚籃寺、正覚院、正山寺、荘厳寺、徳玄寺、南寺、薬王寺をはじめ多くの関係者の皆様に、格別なご配慮とご協力をいただきました。

授業運営にあたりましては、柏木 弘 校友会事務局長 、清水満久 校友会元理事、岩崎あかりさん(油画3年)、賀来 栞さん(油画3年)、岡田雅志さん(造形3年)、岡本 純さん(造形2年)、相川裕紀子さん(1995年油画卒業)、近あさみさん、町田廸子さん(1964図案卒業)、渡辺久実さん(1994油画卒業)、長谷川三希子さん(2007工芸卒業)、吉國元さん(造形3年)に温かく力強いサポートをいただきました。

授業の様子はJCNみなと新宿(ケーブルTV)、パブリック・ブレイン「Day Art」(フリーペーパー)にご取材いただきました。

そして、保護者はじめ見学者の方々にお越しいただき、皆様のご協力のもと、無事に授業を終えることができました。
ありがとうございました。

(飯田)

Posted by 出前アート大学 6:55  

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