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No.039藤沢市立善行小学校「しんぶんかいじゅう」



藤沢市善行小学校にて11月24日(木)に1年2組27名の児童を対象に、「しんぶんかいじゅう」という授業を行いました。
講師をしてくださるのは、造形作家の関口光太郎さん('06 彫刻)です。

今回の授業では、事前授業で「こんなかいじゅうがいたらいいな」というテーマで児童が描いた27匹のかいじゅうを、関口先生が組み合わせて1匹の絵にしました。
それをもとに新聞紙とガムテープを使って大きな大きな「善行ドラゴン」をつくりました。
「あまりにも大きい」「あまりにもたくさんある」といった「過剰性」をキーワードに講師の世界観に触れると共に、絵が立体になることで夢を実現させることを味わい、
大きな立体をつくることを通して、圧倒的な量の新聞紙はじめ素材を体感する授業です。
その様子をご報告します!


出前アート大学No.039「しんぶんかいじゅう」
講師:関口光太郎 氏(造形作家・本学'06 彫刻卒業)
日時:11月24日(木)8:40〜13:55
場所:藤沢市立善行小学校 視聴覚室 コモンスペース

(1時間目) 講師作品紹介




視聴覚室に集まった児童が大きな声で講師の名前を呼ぶと、彫刻作品「海がすきな男」を抱えた関口先生が登場しました。まるで生きているような「海がすきな男」の鋭い視線に、児童は少し緊張気味です。「海がすきな男」も先生の傍らに座って授業を聞きました。



最初に作品紹介を行いました。作品は新聞紙とガムテープでできていること、大きな作品をたくさん作っており、高さ4メートルを越える作品では、展示の会場でクレーンを使って組み立てたそうです。



次に事前授業で「こんなかいじゅうがいたらいいな」というテーマで児童が描いた絵が
発表されました。空を飛ぶことができたり、身体の色がカラフルだったり児童が自分でつけたかいじゅうの名前も1匹1匹とても個性的です。







続いて27匹のかいじゅうを、関口先生が組み合わせて1匹に描いた「善行ドラゴン」が発表されました。



関口先生が紙芝居を使って、善行ドラゴンを紹介します。



善行ドラゴンは江ノ島の海に住んでいて、空を飛びます。



今日は、善行小学校へ空を飛んでくるそうです!




ですが善行ドラゴンは長い間水から出ることができないそうです。そこで、関口先生が用意したコモンスペースの新聞紙の海へ、みんなで移動することになりました。



コモンスペースに着いたら、担任の森先生が紙芝居の続きを読み始めます。



善行ドラゴンの後には、いもむし鬼という子どもを食べてしまう悪い虫が追いかけてくるそうです。



と、その時、森先生が二階の窓を指さします。
そこには、「いもむし鬼」がいるではありませんか。児童の間から悲鳴があがります。どうやらこちらに向っている様子です。



児童はいもむし鬼に気づかれないよう、静かに新聞紙の海に隠れました。





「悪い子はいねかー!!我輩は、いもむし鬼だ!善行ドラゴンが、小学校へ行くと聞いて、ついてきた。先回りして、子どもを食べにきたぞー!だれもいないなー。よし!5時間目にまた来よう!」

いもむし鬼が行ってしまうと、新聞紙の海から児童が顔をだします。




いもむし鬼が去って、関口先生が帰ってきました。「善行ドラゴンは、強いです。いもむし鬼を、追い払ってくれます。みんなで、さっきのいもむし鬼より大きな大きな善行ドラゴンを
5時間目までにつくりましょう!」



9:25〜10:15(2時間目) 善行ドラゴンづくり(全体の肉付け)
善行ドラゴンの制作が始まりました。新聞紙を何枚かあわせてまるめ、ガムテープで巻いてとめ、大きな塊を作ります。




この塊を木の角材でできた善行ドラゴンの骨組みにガムテープでとめていきます。今回は布ガムテープを使うため、児童が手でテープを切ることができるのかと心配していましたが、最初はおぼつかない手つきの児童も回を重ねる度にどんどん上手になっていきました。
友達と協力しながら、作業は進んでいきます。




あっという間に30分後には、骨組みが見えないほど肉付きのよいかいじゅうが出来あがりました。
この後、関口先生の描いた善行ドラゴンの絵を見ながら、足や背中のトゲなど細かい部分を作り、身体に貼りつけていきました。







10:35〜11:15(3時間目) 善行ドラゴンづくり(模様つけ)
今度は茶色の布ガムテープの上に、色ガムテープやカラーマスキングテープを貼って、善行ドラゴンの身体に模様をつけていきます。
とてもカラフルな善行ドラゴンに変身しました。





11:25〜12:00(4時間目) 善行ドラゴンづくり(仕上げ)
続いては、ドラゴンの背中に乗せたいものを作ります。
新聞紙に色ガムテープを使い、ハンバーガーや果物、アルパカや猫、卵が入った箱など、思い思いのものが完成しました。





13:10〜13:55(5時間目) 発表会
完成した全長約4メートル、高さ約2mの大きな大きな善行ドラゴンをみんなで鑑賞しました。
ドラゴンの背中には、食べ物や動物など、さまざまなものがたくさん乗っています。
両耳には、携帯電話もついていましたよ!



「そういえば・・・」と関口先生。
「いもむし鬼が5時間目にもう1回来ると言っていました。パトロールに行ってきます!」
関口先生がいない間、森先生と児童はいもむし鬼が来た時に備え作戦を練ります。
節分の鬼退治のように新聞紙で豆を作り、善行ドラゴンの後ろに隠れて待つことになりました。



しばらくすると、声が聞こえてきました。
「悪い子はいねかー。」再び現れたいもむし鬼にむかって、児童がいっせいに豆をなげました。



すると、いもむし鬼が泣いてしまいました。
森先生がおにぎりを差し出し言いました。
「いもむし鬼、子どもを食べるのは止めなさい。おにぎりの方がおいしいよ」
「ごめんよー、子どもを食べるのは止めて、おにぎりにするよ。
ほんとうは皆と仲良くしたかったんだよ」
みんなと握手して仲直りしたいもむし鬼は、手をふりながら江ノ島に返って行きました。



そして、いもむし鬼と入れ違いに、関口先生がパトロールから戻ってきました。
肝心な時にいない関口先生に、いもむし鬼は本当は関口先生なのでは?という声もあがりました。
これはいずれの日にかまた、いもむし鬼と会って確かめられるとよいですね!



完成した善行ドラゴンは、関口先生の動物の作品や原画、紙芝居とあわせ、12月13日(火)までコモンスペースに展示され、先生方、保護者、他の学年やクラスの児童が見られるようになっています。




限られた時間の中で、大人顔負けの大きなドラゴンを作りきる1年生のパワーに、圧倒されっぱなしの一日でした。善行ドラゴンといもむし鬼のストーリーの中で、空想と現実とを自由に行き来したり新聞という素材やその圧倒的な量を体感する、そんな楽しい時間になったのではないかと思います。


授業の実施にあたり、藤沢市立善行小学校の本川久子 校長先生、三橋雅幸 教頭先生、1年2組担任 森はるか先生、由川聡子先生をはじめとする先生方に、多大なご理解とご協力をいただきました。

授業運営にあたりましては、講師アシスタントとして構想の段階から授業チラシ、キャプション制作にもご協力いただいた関口希望さん('06 油画卒業)、記録用写真撮影に森英嗣
さん('91 GD卒業)、アシスタントスタッフの山本 悠さん(油画4年)、井口 信さん(日本画3年)、鈴木夏海さん(日本画3年)に温かく力強いサポートをいただきました。そして、多くの保護者の方々にお越しいただき、皆さまのご協力のもと、無事に授業を終えることができました。

また、授業の材料として新聞紙をご提供いただいた毎日新聞 善行販売所、産経新聞 善行販売所の皆様、誠にありがとうございました。


(飯田)

Posted by 出前アート大学 11:38  

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